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トリノ五輪フィギュア女子-明暗をわけたもの

2006年02月26日 04:28

 女子FSも終わってエキシビションも終わって、五輪も明日閉幕ですね。
 なんだか2週間、長かったようであっという間でもありました。
 特に男子SP、FSの観戦から戻ってからは、自分のまわりで色々あったこともあって、時間の経つのがものすごく早く感じました。スケートのことだけに夢中になれない状況でもあったわけですが、幸い母の回復も予想以上に早く、来週アタマに退院になるとのこと。良かったです。

 シズゥ優勝、章枝ちゃん4位の女子シングルが終わってから、極個人的なメールを貰いました。それと同時に他のフィギュアファン(特に章枝ちゃんファン)の方からもいくつかメールを貰い、僕個人の意見を求められま した。

「荒川さんの優勝は喜ばしいこと。けれどずっと頑張ってきた章枝ちゃんへもメダルをあげたかった」

 そうですよね。
 僕も章枝ちゃんの頑張り、努力の姿勢は素晴らしかったと思います。
 けれど、これらのメールへ返信する前に、僕の本音中の本音を言わせてもらいたいのです。

 僕は、恩田美栄の応援者です。

 全日本選手権を含むトリノ五輪選考レースの結果、恩田のよっちゃんは代表に選出されませんでした。彼女自身「五輪は難しいかな、と思う」とシーズン中に漏らしていましたが、全日本でのあの気迫の演技は、表彰台には上れなかったものの、多くの人に記憶される傑作となったのではないでしょうか。

「代表に選ばれる・選ばれないは別として、全日本では自分のベストを尽くすことに集中する」

 11月末、サンクトペテルブルグで行われた「ロシア杯」で会った際、彼女はそう言って、最終調整の地トロントに出発していきました。そしてその宣言どおり、全日本での演技は、彼女のキャリアで最高のものになったと僕は思っています。

 今回の五輪を僕が一スケートファンとして純粋に楽しむことが出来たのには、皮肉にも、「よっちゃんが居なかったから」という理由があります。けれど、寂しさがなかったわけではありません。実は、男子SP、FSのチケットはもちろん女子SP、FSのチケットも購入していました。女子の競技が始まる5日前までチケットを手元に残していたのには、理由は言わずともわかっていただけるんじゃないでしょうか。実際アメリカのエミリー・ヒューズも女子SPの10日前になって急遽代替出場が決まりましたよね。

 全日本で優勝した章枝ちゃん、今季のGSで真央ちゃんとの直接対決で苦渋を舐めたシズゥ、そして美姫ちゃん、3人とも頑張って欲しかった。世界選手権に出場するのも容易いことではないのだから、4年に一度の五輪で大観衆の前で滑るということは競技者としての夢、でしょうね。出場するだけで素晴らしいこと。そこで表彰台、金メダルとなれば、一般人の自分には想像もつかない栄光となるはず。その栄光を、よっちゃんらと競ってきたシズゥが掴んだわけですが、嬉しかったですねぇ、ホントに。一番に応援してきた選手というわけではないですが、この日「彼女が一番!」と自分が思った選手が表彰台の一番上に立ったわけで、一スケートファンとしての幸福感で心は満たされました。

 僕にとって「競技を純粋に楽しむ」ことが出来るかどうかは、「いかに冷静に見守ることが出来るか」に繋がります。そして(極力)冷静に見た末に僕は「シズゥが一番」、少なくとも「この日の主役は荒川静香」だと思いました。絶対評価として出てくる得点はもちろん、他選手との比較をしても、荒川さんの優勝は誰も否定出来なかったはずです。

 チームメイトが歓喜する裏では、章枝ちゃんが悔し涙を流しました。
 僕個人の意見では「五輪2大会で入賞するだけで素晴らしいこと」と思うのだけど、チームメイトと一緒に台に上がることが出来なかったという意味では負けなのでしょうね。トリノ五輪出場に辿りつくまでの彼女の努力を知っているファンの人たちなら尚更、彼女の悔しさと涙を共有したくなるものなのでしょう。

 表彰台に上がる・上がれないを「明」と「暗」とするならば、僕が思うに、それをわけたものは「質」。専門家ではない自分がこう言うのも気が引けるのですが、それが正直な感想でした。要素の質はもちろんです。FSでサーシャが脱落し、シズゥがゴージャスな演技を披露した後、章枝ちゃんがメダルを獲るためには、「クリーンに滑ること」が絶対条件でした。プログラムに組み込むジャンプがメダリスト3人より少なく、スピン、スパイラルでも上の3人と若干差をつけられていれば尚更、完璧に滑って後は結果待ち、というシチュエーションになっていたはず。けれど、大きなミスではなかったものの、ダブルになった二回目の3フリップ、終盤の2アクセル+2トウのシェイキーな着氷は、その状況では許されなかったことだと思います。

 そしてプログラムにも問題があったと思います。個人的には要素のことより、演技の質に疑問が残りました。正直SPは「もっとコンポーネントが出てもいいのに」と思いました。けれど、「情熱がテーマにしては軽すぎる」という思いもありました。彼女のセールスポイントがその軽快さにあったとしても、フラメンコがテーマの演技は珍しくないだけに、「踊れるか・踊れないか」、そして「演技の重厚さ」は、技術以上に比較されやすかったと思います。

 FSのラフマニノフですが、僕は演技の雑さが少し気になりました。
 前半、中盤は美しく滑っていたと思うものの、終盤にかけての曲の転調は正直「自然じゃない。強引だ」と思いました。

 そして、あくまでも主観ですが、FSの選曲には「運」の問題もあったと思います。
 カテゴリーごとにジャッジは違うでしょうが、それでも「男子しか見ない」「女子しか見ない」というジャッジはまず居ないでしょう。男子シングルで、しかも同国の高橋大輔くんが同じ「ラフマニ」で見事なストレートラインステップを踏んだのに対し、彼女のステップには上半身と下半身の動きにぎこちなさが見られました。ドラマティックなメロディーで、密度の濃さを求められる箇所だっただけに、レベル云々の前に印象度という点で不利だったと思うわけです。

 1999年の世界選手権でも、僕は同じことを思いました。
 FSで「仮面の男」を滑った本田くんと、翌日のダンスFDで同じ曲を使ったアニシナ&ペイゼラー。
 入賞を目指す本田くんに対しアニシナ組は優勝をかけてのFDでしたが、前夜FS4位となった本田くんの「仮面…」がアニシナ組の滑走中に思い出されるほど、彼の印象は鮮烈でした。
 同じ試合ではないものの章枝ちゃんの使った「ラフマニノフのピアノ協奏曲」の同じメロディーでは、1994年のミシュクチュノク&ドミトリエフ組(リレハンメル五輪2位)の情熱的なステップが思い出され、序盤のスローな部分では1996年の陳露(世界選2位)のFSが思い出されるなど、有名曲を使うリスクが確かに存在していたと僕は思います。

 章枝ちゃんの演技を(僕なりに)冷静に振り返ってみましたが、決して悪い出来ではなかったと思いますし、悪くないどころか「素晴らしい」に分類される内容でした。しかし、スケートカナダでの滑り、NHK杯、全日本と見てきた中で僕が彼女に対して思ったのは、

「劇的な変化を見たい」

 ということでした。
 熱心に見てこられたファンの人たちには、地道な努力の末の細かな進歩、彼女の成長ぶりがわかるのでしょう。けれど、年に限られた数しか見ることが出来ない自分は、「安定した演技だ」と彼女を評価したい一方で、物足りなさも感じていました。特に新ルールが導入されてからは4分間の全てが評価対象となり、選手にとっては過酷な状況になっていると思います。求められるもののレベルが上がり続けるなか、トップ選手であれば尚更、勝つための技術開発、演技力開拓を、よりシビアに要求されるのではないでしょうか。正直、今季の彼女の演技からは新鮮さを感じることは出来ませんでした。

 僕がトリノ女子の表彰台の顔ぶれに納得しているのには、
「高レベルの要素をこなし、かつ演技の質も向上させている」
 と思わされるからです。
 3連続ジャンプ、オリジナリティあるスパイラル、複雑なステップ、スピン。
 要素をこなすので精一杯で演技の質が逆に失われている選手が目立つ一方で、難度の高いプログラムを組み高い完成度を持って演技をしっかりこなす選手がいる。男子シングルにおいてのジャンプの配点には正直疑問は残るものの、「女子シングルとはこうあるべき」と思わされたのはサーシャであり、イリナであり、そして五輪FS当日に彼女たちを凌ぐ演技をしたのがシズゥだった、そう僕は思っています。

 章枝ちゃんは現役続行を表明したんですね。
 シズゥはプロに転向するのでしょうか。
 アマチュアで滑る選手は、自分のしたいことと要求されることの狭間で悩むことも多々あることでしょう。プロとして滑るのは制約がないとも言われますが、お金を貰って滑るという点ではアマチュア以上にプレッシャーのかかる世界ですよね。

 けれど、観客の前で滑るということでは同じ。
 シズゥも章枝ちゃんも、今回挫折を味わった美姫ちゃん、年齢制限のため出られなかった真央ちゃん、進むべき道を熟考しているよっちゃん、初の世界選手権直前の友加里ちゃんも、みんな頑張ってよ。会場にこそ頻繁に行けないけれど、応援してますよ。

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コメント

  1. ゆみこ | URL | 79D/WHSg

    お母さん、退院おめでとう。
    早く元気になって夏に会えることを楽しみにしています。
    素人ファンだけど、Hiroさんの言ってることとっても納得するよ。
    まだビデオ送るね。
    スケート観戦、またながら見だったよ。
    えっちゃんが下痢嘔吐症でね。
    看病の1週間だったわ。
    まだ下痢してるけど。

  2. 黒子 | URL | 79D/WHSg

    お母様のご退院おめでとうございます。
    村主選手についてかなり的を射た考察を拝見できて、
    改めてこちらのサイトを見つけられてよかったと思いました。
    生で見ていて、あぁもう少しPCSが…と思いましたし
    大きな失敗のあった二人にあれでも勝てないのかという苦さが強かったのも事実ですが、
    ジャッジに厳しく見られる箇所があったのも事実。
    全日本のときなどよりスピードがもうひとつでしたし技の実施も
    かたかったですね。
    順位がもっと上でもおかしくないので内外で疑問の声が上がるのも
    自然なのですが、
    最近、この競技に詳しくない人が半端な知識で語るようになっていて
    偏った憶測が流布していくのかと思うと殺伐といたします。
    甚だしいところでは「人種差別だ!」とか何とか…

  3. Hiro | URL | 79D/WHSg

    >ゆみこ姉さん
    姉さんに続いてえっちゃんまで?!
    なんで毎年この時期なんだろう。
    SEANが言ってたけど、ここもかなり流行ってるみたいなのよ。
    病院施設の衛生問題に原因があるんじゃないかって彼言ってたけど。
    早く良くなること願ってるよ。いつもありがとうね(^_-)
    >黒子さん
    そういっていただけて嬉しいです。
    僕はシズゥ優勝後の日本の「フィーバー」がどのくらいすごいものなのか、
    文字でしかわかりませんが、今大会唯一のメダル、しかも冬季五輪の花
    女子フィギュアの金ってことで、騒ぎも尋常じゃないんでしょうね。
    実際章枝ちゃんは好きで応援してきましたが、もう少し攻めの姿勢が
    見たいな、と今季思っていました。既に完成(大成)し技術的に磨いて
    いくのは難しいのかもしれませんが、来季にむけ頑張って欲しいですね。

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